[コメント] 犯人は21番に住む(1942/仏)
この酒場の客を映して背景のドアから女性(娼婦?)が入って来る縦構図。あるいは犯人のミタメで殺人場面を長回しで撮ったショットの後、警察署内の上意下達を小気味よく繋いで、主人公の警視−ピエール・フレネーを登場させるのはドアの後ろという洒落た演出。
以降も全編に亘って飄々とした軽い演出が続く。フレネーと恋人の(事実婚という感じで同居もしている)歌手−シュジー・ドレール、2人での探偵譚も終始コメディタッチだ。そこが面白いところと感じる観客と、緩いと思う観客に分かれるだろう。フレネー一人について云っても、身に危険が迫っている状況なのに平然と落ち着いている様子はカッコいいが、全くスリルに機能しない。全体、ハラハラさせられるような演出はほゞない。
しかし、舞台がタイトルにある21番、ミモザ館という下宿屋に移ってからも、各部屋のドアを使った演出をこれでもかと見せる部分は面白いと思う。牧師に扮したフレネーが「間違えました」と云いながら下宿人の部屋のドアを勝手に開けて中に入るのを繰り返した後で(コラン−ピエール・ラルケと、ララプール教授−ジャン・テシエの2人の部屋でこれをやる)、フレネーが自分の部屋(13番)に入ると、別の下宿人、医師のリンツ−ノエル・ロクヴェールが中にいて荷物を漁っている、というシーケンスが顕著だろう。「間違えました」と云いながら部屋を出ていくリンツ医師に、フレネーが「仕方ない」と云うのが可笑しい。この後も、ドアを絡めたシーンは数えきれないぐらい出て来る。
あと、アッと驚かされるようなショットはオープニングすぐの、犯人のミタメの長回しぐらいで、以降は特に無い。これは期待外れだった。最初にヒッチコックばりの凄い移動ショットを見せられたので、こういうのが何度も繰り出されることを期待しながら見ることになってしまったのだ。
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