[コメント] 戦火の大地(1944/露)
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捕虜たち百人ほどが移動させられるとき、お上さんたちが雪道を疾走して、黒パンなどの食料を渡そうとする。子供たちにも渡させようと預ける、子供たちもすばしこく雪道を走る。ドイツ兵たちは射殺する。女だろうと子供だろうと構わず問答無用。それでも村人はまるで諦めない。黒パンを捕虜の手に握らせ、懐に放り込み、そしてぽんぽん殺される。この件は感動的である。
お産で帰省したオレーナ(ナターリヤ・ウジヴィー)は橋爆破を疑われてひとりでやったと頑なに証言を拒み、下着姿で雪道を歩かされ突き飛ばされる。食料を差し入れた少年は殺され、誰だか判らぬよう家の中を掘って埋葬される。序盤には路上に土もかけられない遺体が仰向けに転がっていた。神に祈ると我々の神に祈るなと即殺される件もあった。ここではソ連側もキリスト教を排斥していないのが興味深い。
終盤、全員がなぜかアラビアのロレンスみたいなコスチュームのパルチザンたちがスキーでやって来る。ドイツ兵に取り入ったプーシャ(ニーナ・アリソワ)は帰還した夫に問答無用で殺害される。彼女は亭主が戦死したと思って絶望していたのだった。亭主が生きている情報さえ得ていればこんなことにはならなかった。邦画ならこのジレンマを種々検討するところだろう。本作は、彼女の事情なんか知らないよ、敵に寝返った事実だけが重要だと語る。団結を乱すものはそれだけで悪、殺されてよいと主張している。
冒頭「よき人生を望むなら真実のために戦わねばならぬ」と字幕。中盤に「ドイツ兵は反面教師、行く先々を愛国者にかえる」と老人が語る。最後には住民たちはパルチザンにドイツ兵を殺すな、「1、2分で殺していいのか。人民裁判で怒りを叩きつけよう」と云う。ソ連が第二次大戦に臨んだナショナリズムが端的に表している。
冒頭は漫画で示されていた村にかかる虹がラストは実写になる。虹はよい前兆と語られている。ドイツ兵は雪上、巨大なスリッパのようなものを履いているシーンがあり、気になった。
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