[コメント] 夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく(2023/日)
男子が通る。廊下の奥で、桜の花びらをつかもうとしている女子がいる。これが主人公のアカネ−久間田琳加。マスクをしている。男子はセイジ−白岩瑠姫。彼の目や口のアップショットがあり、「大嫌い」と云う。次にアカネが目を覚ますシーンに繋げるので、冒頭は夢かと思った。アカネの家族は母親−鶴田真由と小さな義妹、父親は義理の父−吉田ウーロン太。家の庭には竹林がある。家業はカフェだ。
通学途中、道路のカーブミラーが映るのだが、これも別のミラーと合わせ鏡になっている。この凝った鏡の使われ方を見て、本作は鏡の映画でもあるのだろう、と予想した。鏡は、アカネがまつ毛をケアしたり、リップを塗ったりといったシーンで活用されるが、思ったほどは使われない。結果的に冒頭の鏡の使い方は、思わせぶりに感じる。
また、本作は、マスク依存症のアカネが、いつマスクを外すか、あるいは最後まで外さないのか、がテーマ(ずっと気になりながら見る事柄)になる映画だが、私は、黒いタイツを脱いで素肌の脚を見せるかどうかも気になりながら見た(そのネタばらしはこゝでは自粛する)。これについて、作り手はまったく無頓着に思えるのも(アカネが黒いタイツを履いていること自体に無頓着というか)少し減点か。
最初の段落で本作は空の映画だと書いたが、そう思わせるのは、見た方なら納得されると思うが、3つの極めて美しい空を映したシーンがあるからだ。一つ目は、最初にセイジがアカネを学校の屋上に連れて行ったシーン。屋上に上がる時に、丸いハッチのような入り口を通るのだが、その際、手を引っ張るという所作の演出も効く。そして、屋上の2人の周りを何周も回るロングショットの移動撮影が素晴らしい。空の青さが実に綺麗なのだ。これはドローン撮影か。2つ目の空は廃止された遊園地。この場面は夕陽の美しさだ。茜色と青磁色。セイジは夕焼けより朝焼けの方が好き、と云う。こゝで朝まで過ごすのかと思ってしまったが、ちゃんとアカネを自宅まで送って親に挨拶する。そして3つ目は、もう想像がつく通り、二人で朝焼けを見る場面なのだが、この場面の詳しい状況を書くのも自粛しよう。ひとつ、その前日の夜の暗さ(黒色の夜)もいい撮影だということは書いておきたい。
さて、主人公2人はいずれも魅力的な造型だと思う。白岩瑠姫は終盤になるに従って、どんどんカッコ良く見えて来る。しかし、プロットの牽引という意味でも、エンディング(エピローグ)の扱いからしても、主演は圧倒的に久間田琳加だと云うべきだろう。ずっと仔犬のように可愛いと思いながら見た。あと、アカネの友人役の箭内夢菜もいい。この人は『殺さない彼と死なない彼女』を見た時には、将来主演を張る女優になるだろうと思ったものだが、このルックスのまゝでも主演作があってもおかしくないと感じる。そして、美術の先生−上杉柊平も面白い造型だ。特徴のある喋り方、美術室の机に寝そべっている姿など普通じゃない感じが上手く出ている。
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