[コメント] とんかつ大将(1952/日)
佐野周二はちょっと出来過ぎのキャラクターだが、飄々とした風体がこの人にぴったり。脇役陣ではやはり三井弘次がかなり良い役回りで目立っている。彼が「聖夜」を唄うとても良いシーンがあり、本作はクリスマスの映画としても記憶したい。
津島恵子の乗る自動車が、坂本武の曳く達磨の荷車にぶち当たり、佐野周二の登場から津島と二人のやりとりに至るこの冒頭の得も云われぬ洗練されたカット割りを見た時点でもう唸ってしまう。しかし、なんと云っても、終盤の津島恵子と角梨枝子の対決シーン前後が本作の白眉だろう。まず2階の窓から路上の三井弘次ら、長屋の住民たちを見る津島のバストショットがあり、カットを変えて、路上から仰角ぎみに三井とその奥の2階の津島を捉える見事な縦構図に繋ぐ。続いて、津島が路上に降りて、角梨枝子と口論になるまでの二人の画面への出し入れも見事なさばき具合だが、2階の視点でのクレーン移動でのカットが2カットあり、もう驚愕してしまうのだ。特に、2回目のクレーン移動は誰か登場人物の見た目ではなく、監督川島雄三の見た目に他ならない、神の視点とでも云うべき客観ショットだ。
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