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[コメント] 憐れみの3章(2024/英=米)

人を支配しようとする者。自ら進んで支配される者。そんな権威に対する人間の悪魔的欲望を描いて容赦ない。それも小難しい説教話ではなくお伽噺の教訓のように分かりやすく。そして3篇ともファンタジー&サスペンスの中編として楽しくも醜悪で抜群に面白い。
ぽんしゅう

女王陛下のお気に入り』(2018)のメジャー性にちょっと首をかしげてしまい、さらに作画的にも物語的にも肥大化の一途をたどる『哀れなるものたち』(2023)に、まあこんなものなのかなあと自嘲ぎみに納得しようとしていた初期のヨルゴス・ランティモスファン(の私)としてはこの原点回帰はうれしい限りです。

脚本にエフティミス・フィリプが参加していることもあるのでしょうか、『ロブスター』(2015)や『聖なる鹿殺し』(2017)がはらんでいた“得体のしれない毒”が、今回は一時間弱の中編(3本)という適度な時間尺にそれぞれ凝縮されていて、観る者に有無を言わさぬ明快さで突き刺さってきました。途中、ルイス・ブニュエルの作品群を思い出していました。

あと、異なった3つの物語の個性的なキャラを変幻自在に(嬉々として)演じる俳優さんたちをみる贅沢。これもとても楽しかったです。

最後に、これから本作をご覧になる方へご忠告。エンドクレジットの途中で席を立つと2時間45分かけて観てきた“意味”がなくなります。くれぐれも明るくなるまで席は立たないように。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)Lacan,J[*]

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