[コメント] 西湖畔(せいこはん)に生きる(2023/中国)
心地よいリズムと美しい映像で湖のほとりに駿立する茶畑に暮らす母(ジアン・チンチン)と息子(ウー・レイ)の物語が始まる。そこは歴史的に“伝統”の地であり、対岸に垣間見えるビル群の夜景との対比もまた不気味でありながら現代の景色として美しい。
そして「マルチ商法」の逸話へと物語が突入したとたん映画は一転しどんどん暴走し始める。 このグー・シャオガン演出の、ひとつのこと(語り口)にこだわりはじめると全体の体裁が見えなくなる、あるいは確信犯的に見ないという“加減の無さ”にある種の偏執癖を感じてしまう。そして中盤以降は神話的にもみえる物語を語りながら案の定“物語映画”として破綻する。
それでも★印2つにしなかったのは、その「破綻」に作者の意志を感じたからです。私は人から感想を聞かれたときに「つまらなかったです」と応える映画を★印2つにすることにしています。でも本作は決してつまらなくはなかった。グー・シャオガンという映画作家は、通常とされるコンテキストとは違った基準の“塩梅”といううか“加減”で映画を作っているのではないかと思えてきました。
ちなみに監督の前作『春江水暖 しゅんこうすいだん』の私の感想を転載しておきます。「チャレンジングな撮影に目を見張るが、才気が走り語るためではなく見せるための画になってしまっているきらいを感じた。何気ない家族の物語に潜む深みが立ちあがってこず、逸話の魅力を引き出し切れていないように思う。何もしなくても日常はもっと面白いものだ。」
暴走は前作から始まっていたのでは・・・
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