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[コメント] HAPPYEND(2024/日=米)

33歳、米国生まれ日米育ちの空音央監督(坂本龍一氏の子息だそうだ)が描く近未来の日本の高校では様々なルーツを持つ生徒たちがさしたる軋轢なく当然のように過ごし、卒業式だって米国式の6月だ。ただ彼らが友情や政治に葛藤するさまはいたってオーソドック。
ぽんしゅう

未成年の夜間外出、無軌道で無邪気な悪戯、扇動者と政治集会と街頭デモ、バリケード封鎖と立てこもり、なんと岡林信康まで・・。ネタばれになるので詳しくは書けないが、空監督の体制批判思考は1960年代後半から70年代の空気と呼応する。私は大島渚の『日本春歌考』や村上龍原作で李相日が撮った『69 sixty nine』を思い出していた。

1990年代生まれの新鋭監督には斬新な新規性を期待していたが、友情の捉え方や反体制の表明手段として何か新しいものがある分けではなく“過去の正攻法”に回帰していく。語り口もゴツゴツといささか生硬かつ図式的で素人っぽさが残っているのだが、それも合わせて監督の正直さや誠実さ、そして先達へのリスペクトの表れとも感じられ好感が持てた。

コウ(日高由起刀)とユウタ(栗原颯人)の卒業後の姿に『バティモン5 望まれざる者』でラジ・リ監督が二人の主人公に託した同志ならではの“選択と理解”と同質の友情を感じた。

(評価:★4)

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