[コメント] アット・ザ・ベンチ(2024/日)
でも、科白の中で微妙に共通する話題が出てきたりする。「もやしマート」(もみじマート)とか。会話劇として、2話目を気に入る人が多いような気がするけれど、私は1話目と5話目の演出基調が断然好きだ。
午後遅くから日没近くまで。全部固定ショットの安定した画面。かなりのロングショットや、ベンチに座る2人の後ろからのツーショット、ツーショットでの切り返し、背中側から広瀬、仲野一人を抜いた切り返し。そして横顔アップの切り返し、主にこれらのカッティングで見せる。最初は会話がウザいと感じるが、だんだん楽しくなる。話のポイントは「残り物」づくし。「義理」という言葉について、絶妙な塩梅と思う反面、ちょっと臭いとも思う。徐々に陽が沈むのを画面で表現する今村圭佑の見せ場。
お昼時か。晴天。これも全部固定ショットだったと思う。ただし、ベンチの前からの切り返しが中心で、1話目よりも寄り気味のショットも多い。岡山がスーパーで買ってきた寿司のアップも挿入される。また、カットはよく刻まれる。刻み過ぎと思う部分もあった。落ち着けよと思った。会話はメッチャ面白いけど、ほとんどコントみたい。お芝居は3人とも上手いけど、ちょっと鼻白む。岡山の帽子が素敵。
雨が上がった後の曇天。全カット手持ち。カメラをぶん回したようなシェイキーな画面で始まる。メッチャ素早いパンも使われる。今田から森、森から今田。ズームを使わないのは、まだ救い。ズームの醜さは認識されているのだ。会話の内容に合わせて、後半はカメラも少し落ち着く。各挿話のスタイルを変える趣向は別にいいけれど、これはやり過ぎだろう。監督が変わったみたいだ。
ベンチのポイント・オブ・ビューのショットが長い。これがモノクロの広角。2人−草なぎと吉岡がベンチ前に立って会話する。途中で草なぎがベンチに座り、左に草なぎの背部、右奥に吉岡の立ち姿という配置になる。この画面も嫌い。これに続く上空の視点、俯瞰のモノクロショットも、お父さんの視点か?人智では計り難い。2人が不思議な言葉で喋り出し、神木が登場してギアシフトするが、こゝからも画として詰まらないと思った。テレビドラマみたい。監督自身のスクリプトのパートが一番宜しくない。
・5話目−広瀬すず、仲野太賀
やはり、夕景まで。ベンチに座る仲野に画面左から走って来てぶつかる広瀬。演出基調は1話目を踏襲して安定しておりホッとする。2人の座り方(座る位置)について、1話目の最初の時からの変化も含めて感慨深く見せる。2人の退場、フレームアウトのショットもいい。
映画監督としては弟の奥山大史に先を越されているが、追いつき追い越せ、という期待がかかる。本作の各挿話のルックのバリエーションは、オムニバスとして理解できるが、私は、できれば次は、1、5話目のスタイルで全編通した演出が見たい。
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