[コメント] Broken Rage(2024/日)
ほとんど自然主義文学。それも、急に澄んだ目になる老人のような、自意識の濁りのない、透明さの。ただあるがままに、時に唖然とするほど寒く、時に腹が引き攣れる程おかしい。そこには、どこまでも付き纏う自戒も、自己憐憫も、老残の悲哀も、自己顕示欲も何もない。脱ぎ捨てた覆面の内側は、すっからかんで明るく呆けている。生きてるだけで、喜劇。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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圧倒的な自己認識力で、これが出来る境地にいる人を他に考えた。イーストウッドと宮崎駿である。
ガニ股でノロノロ歩く後ろ姿の反復に、血と暴力への倦怠も、コントの脱力も乗せられるのは、正直、並大抵のことではないと思う。
寒い。然り、私もそう思う。しかし全く悲壮感や翳りのない、無邪気な老残だ。これまでの自己否定系の作品群の中でも稀有な明るさだと思う。人に歴史あり。歴史あってこそのこの境地だ。どんな外部の評価も彼は歯牙にかけないだろう。私は感動した。
その他
清塚信也の劇伴が良かった。サティとショスタコの合いの子みたい。殊勲賞は彼だろう。
宇野祥平周りは、椅子取りゲームオープニングの寒さを除けばどれも素晴らしい。 (「白竜さん、そこは笑っちゃダメですよ!」)
「時間ちょうせい」は寒すぎる。極寒。
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