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[コメント] ミッキー17(2025/米)

これは面白い!設定や梗概の記述はできるだけ割愛して、端的に良かった部分、面白かった場面を書こう。まずは、主人公のミッキー−ロバート・パティンソンとパートナーになるナーシャ−ナオミ・アッキーだ。
ゑぎ

 私はこのナーシャのキャラの描き方が本作を支えていると思う。彼女がいるからこの映画が好きだ。どうして優秀な彼女がミッキーみたいなヤツをこれほど大事にするのか、全くその理由が描かれないのがいい。食堂で団長−マーク・ラファロとその妻−トニ・コレットが登場した際、周りが盛り上がるのをしり目に冷ややかに見るナーシャ。ミッキーが2人になって無条件に喜ぶ彼女も予想が覆されて実にいい(ミッキーの抹殺リスクよりも快楽を優先させて考えている)。

 実は、もう一人フォーカスのあたる女性乗組員カイ−アナマリア・ヴァルトロメイ(『あのこと』のヒロインだ!)もとても魅力的なので、2人が同レベルのヒロインになる展開かと思ったが(そんな展開も充分に考えられそうな分岐点がある)、いやいや、ナーシャが全きヒロインで、終盤のクライマックスも彼女の活躍が目立つのだ。

 あとは細かな点ばかりになるが、冒頭近くに、船外作業をしているミッキーの手(手首から先)が飛ぶ演出が好き。これを見た際は、全編に亘ってもっとブラックな描写が横溢するのかと思った。他には、リプリント機からミッキーが出て来る際に、台の上をちょっとガタガタと後戻りする動きがいい。脇役だと、惑星開拓団に参加する前からのミッキーの友人ティモ−スティーヴン・ユァンの描き方のバランスは絶妙だと思うし、医療班のドロシー(眼鏡をかけた、まだ少女に見える女性)−パッツィ・フェランや、団長の腹心のようなプレストン−ダニエル・ヘンシュオールも印象に残った。

 尚、2人のミッキーがこうも違う、特に18の極端な言動は、最初納得がいかなかったが、これがプロットを転がすポイントなので、こんなものだと(精神は脳の記憶だけで形作られるのではない、記憶は同じでも肉体の物理的組成が異なれば、精神性も異なるのだろうと)受け入れた。また、ダンゴムシみたいな奇妙な生物・クリーパーが生み出すスペクタクルも良い造型と思う。大量のクリーパーが宇宙船の周りに集まりはじめてからの話の運びは少々ルーズだが、群が走りだし、あちこちで小さな山のようなものを作り出す場面は見応えがあった。これを王蟲のようだと感じるのもよく分かる感覚だが、私は西部劇でよくある牛(あるいはバッファロー)のスタンピード(暴走)みたいと思った。

 欲を云えば、コメディとして、もっとスラップスティックに徹する演出ができていれば、さらに良かったのだが、やっぱり難しいのだろう。私はマーク・ラファロって面白いと思ったことがないが、それは本作も同じだ。あと、ダリウス・コンジの仕事ぶりも期待していたのだが、全体、コンジらしさが出ていなかったと思う。太陽のない世界というのは彼に相応しい題材とは云えないだろう。

(評価:★4)

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