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[コメント] 教皇選挙(2024/英=米)

これは良く出来たプロット構成。中盤は、こねくり回し過ぎ、終盤は、ちょっと出来過ぎのイヤらしさを感じるぐらいだ。
ゑぎ

 『アノーラ』以上に明確な多様性志向かつ、全く名作然としている本作を、映画芸術科学アカデミー会員たちはどうして選ばなかったのだろうと思う(ま、多数決のアヤということだが)。矢張りポリティカルな(宗教絡みの)プレッシャーを勘繰ってしまう。また、監督賞のノミネートもない、というのは、結果的にスクリプトの映画という印象になるだろう。

 しかし、私は相も変わらず画面のスペクタクルを見る。これは実に面白い色遣いの映画だ(そういう見方をする観客も実は多いだろう)。中でも(黒や紺や金もあるが)赤と白の映画だと思いながら見た(赤色は多分、誰もが感じるところだろう)。頭の上の赤い帽子、赤いローブ、太いベルトみたいな胴に巻く布、紺の上着の赤いボタン。あるいはカーペットやドア、ドアの封印。赤い壁や椅子も出てくる。穿って云えば、炎や血液。白色は、死体の顔に被せる白布。死体の収容バッグ、法衣には白いものもある。先の尖った角帽。そして傘。終盤の、画面中央に噴水があり、枢機卿たちが白い傘をさして画面に入ってくる俯瞰ショットは、赤と白の色遣いとして顕著な例だ。また、白い煙についても書いておきたい。新たな教皇が決まった際のサイン(のろし)となる白い煙がどう描かれるか。これも少し、私はイヤらしいと感じてしまったのだが。

 キャラクターだと、ゴリゴリの保守派・テデスコ−セルジオ・カステリットが、コメディパートかと思わせられるぐらい嫌なヤツに描かれていて面白かったが、少々類型的造型にも感じた。ライバルたちが一人また一人とスキャンダルや不正発覚により選挙から退場していく際の彼のレスポンスはいい。あと、首席枢機卿−レイフ・ファインズと次席のベリーニ−スタンリー・トゥッチとの2人だけの会話シーンで、2箇所、180度のカメラ位置転換(ドンデン)の繋ぎがあったと思う。序盤の教皇死後すぐの会話シーンと、中盤、ファインズが「これは選挙だよ」と云い、トゥイッチが「これは戦争だ!」みたいに云う場面。カット繋ぎでも、ザラっとした(違和のある)感覚を醸成し、スリルを倍加していると思う。この辺りもよく考えられている。

(評価:★4)

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