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[コメント] アンジェントルメン(2024/米=英=トルコ)

冒頭の洋上での戦闘場面から、実に喜びにあふれた大殺戮が描かれる映画。その姿勢は高次に一貫している。つまり、とっても倫理的な映画だということだ。劇伴もあいまって、コルブッチみたい、と思いながら見た。
ゑぎ

 ただし、コルブッチよりは、あくまでも平然とした(喜びをうちに隠した)殺戮と云うべきかもしれない。

 1942年。西アフリカ沖・ギニア湾にあるフェルナンド・ポー島に停泊中のドイツ軍Uボートへの物資補給船を撃破・沈没させること、ひいてはUボートの無力化が任務。これはチャーチル直轄の極秘作戦で、Mとイアン・フレミングが企画し、現場リーダーは後にジェームズ・ボンドのモデルになった人物だった、という設定だ。このリーダーがガス・フィリップス少佐−ヘンリー・カヴィル。彼が集めた4人のプロ戦士と、現地(ポー島)で潜入工作を担当する2人(一人は女性)を加えた7人による作戦遂行が描かれる。

 まずは、4人の一人、現場の戦術担当−アップルヤード大尉−アレックス・ペティファーをラ・パルマ島のドイツ軍収容施設から救出するシーケンスが、全く痛快なアクション場面になっている。しかし、それにしても主人公側が皆強い。特に、弓矢を使う怪力のラッセン−アラン・リッチソンが実にカッコいいけれど、しかし、その強すぎる造型は、絶対にやられる恐れがないようにも見えてしまい、死活のスリルが生まれない弊もあるだろう。また、上で書いた通り、平然と(というか全くあっけらかんと)大殺戮を遂行する演出は、ファンタジーであることを意識させられる。

 さらに、ポー島までの航程に関しても期待したほどのスリルはなく、緩い描き方だ。そんな中で、現地における工作員で紅一点のマージョリー−エイサ・ゴンサレスが、敵の指揮官ルアー大佐−ティル・シュヴァイガーに接近し、ハニー・トラップを仕掛ける役割りで、ほとんど本作のスリルは彼女一人が担っていると云っても過言ではないぐらいだと思う。だいたい、英国側男性チームは、メチャクチャ強いので、例えば『七人の侍』みたいに、誰が生き残るかといったプロット展開への期待は減衰してしまい、私はエイザ・ゴンザレス−マージョリーをいかに魅力的に見せてくれるか(死活はどうあれ)、という点に最大の関心を持ちながら見た。

 そういう意味で、マージョリーが射撃の腕前を披露するシーンなんかは良いと思ったが(一応、その腕前が結実するシーンもある)、クライマックスにクロスカッティングで挿入される(歌手でもある)ゴンザレスの「マック・ザ・ナイフ」歌唱場面が細切れで中途半端なかたちになっていることは残念に思った。ワンコーラスだけでもしっかり唄う演出にして欲しかった。しかし、概ねゴンザレスのセクシーな魅力は引き出されていたと思う。あと、チャーチルを演じるロリー・キニアは私には少し違和感があったが、『MEN 同じ顔の男たち』の彼とは全く別人に見える役作りには驚いた。

(評価:★3)

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