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[コメント] 花まんま(2025/日)

演出も撮影もプロット展開も素直な素直な映画であり(プロットは予想以上にファンタジーだったが)好感を持つ。
ゑぎ

 こゝ数年、前田哲の監督作が実にコンスタントに見られる状況が続いているが、突出したものも無い代わり、大きく失敗しない安定したクォリティが信頼されているのだろう。

 本作の最も突出した造型は酒向芳の顔作りだ。これは衆目の一致するところだと思う(ホンマか?)。それは子役パートの(子役に相対した)酒向のことを指していて、全体、主人公兄妹、トシキ−鈴木亮平とフミコ−有村架純の子供時代を描いた子役パートがとてもいい。東大阪の自宅で2人だけの会話シーンもいいし、彦根花室(架空の町?)のシーンも素直な撮影だ。こゝポイント高い。子役のフミコは道や人をよく覚えており、スーパーの前にいるアジアン馬場園(馬場園梓)のことを同級生だと云う。これも大人のフミコとのギャップがありキャッチさせる。

 また、何度か現れるツツジのある公園−こゝも彦根の設定だが、ロケ地は京都の蹴上浄水場−の場面が実にスペクタキュラーな画面になっていて、これも特記しておく価値があると思う。最初にツツジの間を有村が歩いて来るショットには目を瞠った。あるいはツツジをバックにした鈴木と有村の仰角ツーショットで、2人にゆっくり寄っていく演出など。ただし、この2人の場面で、鈴木と有村の切り返しがあるのだが、本来、有村一人のショットであるべき画面の右上隅に、中途半端に鈴木の顔が見切れている(小さく映っている)というショットがあり、こんなの珍しいと思った(意図なのか瑕疵なのか分からないが)。

 終盤(結婚式の朝以降ぐらい)は、もう予想通りのことしか起こらないと云っていいぐらいベタな展開になるけれど、こゝまで来ると、それはそれで一種の快感がある。尚、メインプロットのファンタジーに加えて、もう一つのファンタジックな、ドリトル先生みたいな趣向の鈴鹿央士のキャラクターも、私は上手く描かれていると思う。あと、脇役の中では、あまりレビューなどで触れられないと思われる人のことを書いておこう。バスガイドのキヨミを演じている南琴奈について。この人は『アイスクリームフィーバー』ではトップシーンを任されていた人で、本作でも出番は僅かながら、鮮烈な印象を残したと思う。

(評価:★3)

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