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[コメント] 新幹線大爆破(2025/日)

影響されやすいタチなので、自分のことばで書くためにどなたの感想も見ずに書いてみようとしてます。もう言い尽くされた内容だったら、どうぞ鼻で嗤ってください。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







言うまでもなく、犯罪に旬などない。この映画のイメージソースになった作品の発表時、新幹線は旬のネタで集客能力のある存在だった。そして樋口がメガホンを敢えてとった2025年現在、新幹線は人心を躍らせるアイテムではない。こういう企画を樋口が映画会社に持ち込んだとしても、たぶん門前払いを食わせられるだろう。

でも、こういう企画が通ってしまう配信映画というものの価値は、やはり認められるべきだろう。樋口がいまこういう企画をもってきて、面白いと思う外国人製作者に出会えれば、「絶対にいいものができる」と彼がふんだ通りに満足のできる資金を与えてくれる存在であるから。犯罪に旬などないから、現代において盲点となっているのも事実なので、こういう危機に慣れておく義務もまた浮上してくるだろう。全然ニュアンスの違う話だが、ある作家が「サブカルは名作でも50年で賞味期限が切れる」と最近語っていた。『新幹線大爆破』も例外ではないから、この意味でもいまリメイクする意義は大いにあるはずだ。こういう前例があれば、配信映画はますますニーズが拡大してゆくだろう。

しかし。何でこんな話にしてみたのだ。確かに前作の時代から時は流れ、世の中の在り様も変わった。のんが新幹線の操縦士を存在感たっぷりに演じたのはその好例だろう。 ひるがえってこの作品に私が嫌悪感をおぼえるのは、もっと酷い書き替えが行われていたからだ。

嫌われる独善女性代議士。天狗になったユーチューバー。同じくSNSの無責任発言。こういった連中が事故発覚あとの新幹線を掻きまわす。そして、彼らを翻弄する犯人は偽善者の父に恨みを募らせた女子高生である。…なんでこうもリアリティを減じても現代日本に媚びるのか。

そもそも、旬でもない犯罪に警鐘を鳴らす意義のひとつにはふたたびの悪夢の芽を摘む意味もある。だのに、より成功率は低くても若者に再犯をうながすような魅力をもつのが、「虫も殺さなそうな女子高生による大事件」だ。というか、女子高生は虫ぐらい簡単に殺すのだが、今のところ彼女らがこういう事件を引き起こした例はない。そういうふうに火のないところに煙を立てることは、模倣犯を生むような土壌をつくるだけではないか。そういう意味で「なんてことをしでかしてくれたんだ」という感情が残るのは否めない。そういう女子に萌える輩も多かろうし。

その弊害は正直大きいだろう、それを思うと、やっぱり頭を抱えさせるリメイクだった。

(評価:★2)

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