[コメント] トレンケ・ラウケン(2022/アルゼンチン=独)
消えた者と探す者。探される者が探す者。探した者が失ったもの。そんな“出会わない出会い”がパート1.2、12章の出来事によって語られる。4時間30分後には伏線回収などという小細工をあざ笑うように異世界に連れていかれてしまう。解けない謎解きとして完璧な構成。
パート1では登場人物たち三者三様の思考と行動を通して“探す者”たちが描かれる。徐々に透けて浮かび始めるのは“求めるものの”微妙なずれ。掘り返された過去は「幻想の物語」として亡霊のように現実世界に分け入って、現実からの逃 避を促すように植物学者の女(ラウラ・パレーデス)のすべてを支配する。
逃避した女はそれが逃避だと気づかぬまま“水と植物”に象徴された(生命の根源のような)何かに接近し、宙づりのまま捨て置かれるパート2。偶然に端を発した女の行動が、どこかで“必然”に代わったのだが、その転換点の曖昧さがこの物語の一番のミステリー。
作中、流れる多彩な音楽が魅力的だ。特にエンドロール(パート1と2とも)で流れる物語を象徴するような変拍子の曲が耳から離れない。
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