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[コメント] 選挙と鬱(2025/日)

こんなバカバカしいものは絶対に最善の方法ではない
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







選挙映画を観るたびに思う。選挙が民主主義の根幹であることはさすがにオレも疑わないが、こんなバカバカしいものは絶対に最善の方法ではない。もっといい方法を人類が思いつかないから、ずーっとバカやってるんだ。

なんせ浅草キッドには昔から一目もニ目も置いてきたこのわたくしにして、「博士、なにバカやってんだよ…」と幾度もウンザリさせられた。バニラ求人テーマソングの替え歌を歌い踊る博士。選挙カーから政治家のモノマネを撒き散らす博士。自分が気持ちよければ何でもいい三又。あっ、三又が入っちゃった。

いずれも負ければゴミの選挙という過酷なイベントが候補者に要求するふるまいであったり、その要求に候補者が反発してあえて晒す愚行だったりである。選挙のプロみたいな参謀が現れて、博士チームに指導する。指導のすべては、選挙という形式において理に適ったものだ。短いフレーズ、短い話。連呼。選挙カーの速度。候補者としてのふるまいかた。しかしいわゆる「選挙に強い政治家」や「選挙に強い参謀」が、世の中を良くすることにほとんど関係ないという事実には、毎度やりきれない気分になるのだ。選挙のプロ。なんだその人生、虚しすぎるだろ。

そもそも選挙ってムダに大変すぎるのだ。猛暑の夏に行われる選挙なんて特にそうだ。熱中症で倒れる(あるいは死ぬ)政治家が、今後出ないとも限らない。そんなズレた頑張り、政治家が本来やるべきこととまったく関係ない。

またカルト宗教とつながったことがある政治家は、安倍晋三のようにいつどこで誰に殺されても不思議はない。まあカルトに繋がるってことは殺される覚悟くらいしてるに決まってるしオレもまったく同情しないが、殺人を見せられるのは気分悪い。安倍は生きざまも醜悪だったが死にざまも醜悪だった。

異常な条件下で行われる、選挙という祭り。『香川1区』のコメントでも書いたが、これを経験して尚まともでいられる人間は少ない。政治家の人格、世界観にも悪影響があるだろう。逆に選挙を経てなんら心境に変化のないやつは、もともと異常なやつなのだとも言える。博士の顛末は御存知の通りである。

以上が映画を観て思ったことで、以下は映画『選挙と鬱』について。

テロップや音楽に見られるファミコンの意匠は、何をはしゃいでおるのかと不快だった。博士に対する青柳監督の接し方も、どこかお客さん然としてるように見えてどうなのかなあと思う。まあ確かに玉さんと違ってそもそも博士は難しい人で、どうしたって緊張感は伴うし距離感も難しかろうとは思うが。

ひとまずの映画の結末、博士のフリにまんまと『キッズ・リターン』のセリフを「言わされる」監督にガッカリしたことも書いておきたい。これをオチにすればよかろうと博士は考えたのだろうし、それは苦労をかけた監督へのアシストでもあったのだろうと想像はできる。しかしそれに監督が乗ってはダメだよ。

(評価:★3)

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