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[コメント] 昭和残侠伝 死んで貰います(1970/日)

深夜放送していた本作にて、高倉健主演の任侠もの初体験。率直な感想は、丁寧に創られていたなぁという印象。それは役者たちの演技や何気ない所作(もちろん演出だと思うが)に加え、きちっと筋の通った迷い無い脚本。最近の曖昧だったり、矛盾だらけの脚本と大根役者の邦画とは一線を画す。
TOBBY

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テーマが任侠ものゆえ、ヤクザな世界を無秩序に乱れて切ったり、殴ったりする描写で描くのだと思ってたら、実にきちんと作られていた!。そりゃ、人気が出てシリーズになるわけです。高倉健の押さえた演技の中で表す怒りや感情表現が巧い。サポーティングに廻った役者たちも好演で、コミカルに立ち回る長門裕之が、高倉が恩人の復讐に立ち上がる際に、目に喜びの輝きが灯る表情など一瞬だが名演。池辺良もモダンな役者だと思ってたら道理をわきまえた元ヤクザという設定を重量感のある存在感でピシリと演じ、物語を引き締めていた。ヒロインの藤純子は決して上手な演技では無いけれど、芸子見習いから、数年が経ち、一人前の芸者となり姿を現した時の美しさが、嬉しいくらいに艶やかで息を呑む。美貌に説得力があり、黄金時代の映画女優の意地というか、観客の手の届かなさを存分に発揮。仁義、人情、一本筋に、淡い恋路を絡めた脚本は日本人の喜ぶ要素をバランス良く散りばめて文句は無いものの、唯一、惜しいと思う部分も。寺田の親分(中村)を、あっさり一人で信用ならないヤクザの元に行かせちゃう箇所と、恩義があると言え、妹のバカ夫の度重なる浪費に誰も苦言しない緩さ。見えないとこで元ヤクザなら脅すくらいするはずなのに極限まで放置し過ぎ。演技に関しては高倉の妹を演じた女優が僅かな出番ながら大根ぶりを発揮しているのが気になった。それにしても最後まで安心して見ていられる安定感のある作風に感激。

(評価:★4)

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