[コメント] ラ・パロマ(1974/スイス)
映画を見終った人むけのレビューです。
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簡単に言えば、空想の力によって描かれた、女の美しさを愛する男と男の愛の大きさを愛する女の物語。
『今宵限りは』で印象的だったボヴァリー夫人のシーンを演じた二人が主役。メロドラマへの期待が高まる(^^; ←メロドラマ好き
二人はほどなく蜜月関係に入るのだが、ラウルの登場を切欠にパロマがイジドールの愛に不信を抱き、二人の関係はギクシャクしたものになったまま、パロマは死んでしまう。
では、パロマの遺言は、ラウルが言ったように、イジドールの愛に対する不信からくる憎しみなのか。 否。ラウルの登場を切欠にパロマがイジドールの愛に不信を抱いた時から、二人の蜜月関係はその姿を変貌させたに過ぎない。 すなわち、パロマの遺言はラウルの言うような憎しみではなく、自分が愛した愛の大きさを確認するためのものなのだ。 その為に死んでみせるパロマの愛に対する愛は大きい。その片鱗はパロマがイジドールの母にイジドールの愛の大きさを語るシーン(イングリッド・カーフェンがすごいことに!)でも見ることが出来る。 そしてこの大きな愛には、パロマの遺体を切り刻み、自分が愛したその美しさを自ら損なわせるという凄まじい狂気をもって応えるしかないのだ。ペーター・カーンの演技が素晴らしい。
このイジドールの愛とパロマの愛の壮絶な応酬に胸が詰まり、何度も生唾を飲んだ。
また、色彩感覚が今回もまた絶品。ラ・パロマでは赤色が印象的だった。
音楽の付け方も相変わらず大胆。特にパロマの遺体を掘り返した時の音楽。 また、森の中の城をバックにながれるオッフェンバッハ。ダニエルシュミットが後に青ひげを演出したことを思い出した。
カジノ、ブルジョワ、タキシードやドレス姿の少年少女、歌、ダンス、手品。 大金を提示されて目の色を変える召使。 様々なベクトルに向けられた画面がパラパラと切り替わるところはブニュエルを彷彿とさせる。
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