[コメント] パリのランデブー(1994/仏)
各挿話の中で描かれるランデブーには多様なバリエーションがあり、一緒に歩く人物の関係もかなり差異がある。
第一話「7時のランデブー」は、主人公のエステルが彼氏のオラスとイチャイチャする場面から始まるが、すぐに別々の道を歩き出し、一人歩くエステルに男友だちが話しかけてきたり、露店の市場(蚤の市)でハンサムな男性にナンパされたりする様子が描かれ、男女の歩くシーンが繋がれる。これらは手持ちカメラの後退移動や前進移動で撮られている。結局、この挿話のランデブー(待ち合わせ)は、彼氏のオラスとではなく、別の男性との約束であり、ちょっと捻った展開で収束する。
第二話「パリのベンチ」は、恋人のいる女性が別の一人の(彼女に気のある)男性と何度も(10回近く)公園などで待ち合わせをし、2人で歩いたり、ベンチで座って会話したりする様子が描かれる。なので、第二話の歩く人は、この男女(名前は示されない)のみだ。また、ランデブーの都度、日にちと場所の名前が字幕で明示されるので、この挿話は良く出来たパリの観光紹介にもなっている。女性が恋人と別れて男性を受け入れるか、というのがプロットの焦点と云ってもいいが、ラストはモンマルトルの「洗濯船」(観光名所の建物)近くのホテルを前にして意外な展開を見せ終わる。
第三話は「母と子1907年」。これはピカソの絵画のタイトルだ。本挿話の歩く人は、主人公−画家の男性と2人の女性。一人は画家がピカソ美術館へ連れて行くスウェーデン娘(スウェーデン人の友人からパリ案内を頼まれたらしい)。もう一人はスウェーデン人娘をほったらかして、彼が尾行した女性。そして、この挿話で最も特筆すべきは、画家が、尾行した女性に話しかけてからの、歩く2人を後退移動で見せるショット−多分ステディカムを使った(前の2挿話と比べて明らかに)滑らかな(ブレのない)移動撮影だ。そして、彼のアトリエへ2人が入ってから、各人を画面へ出入りさせながらの切り返しの演出だろう。この女性が階段を下りながら、クルクルと回転し振り返る演出もいい。
考えてみると、三話共に、下心のある(と云っても可愛らしいレベルの)男性を女性が突き放すということで徹底されていて、尚且つ、男を賢く手玉に取る、あるいは、何よりも気まぐれな女性の振る舞いを描くという志向がロメールらしい。
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