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[コメント] 楢山節考(1958/日)

昔々「淀川長治のラジオ名画劇場」というラジオ番組がありました。(提供はインナートリップの霊友会。)この番組で淀長さんは本作のことをたいそう魅力的に語られていました。なのでずっといつかは見てみたいと思っていたのだが、見てみるとやっぱり木下惠介らしい失敗作ですね。
ゑぎ

 ま、公開当時はキネ旬ベストワンなので、失敗作という言葉は当てはまらないかも知れませんが、私の今の感覚で云うとこの舞台的な演出は上手くいっているとは思えないです。木下が自分のスタイルを獲得しようとせず、毎回毎回形式を異にする、いや形式にとらわれるのにはとても不自由を感じます。窮屈です。或いは舞台芸術との融合であれば、もっともっと映画の可能性を押し広げるような自由な映画が沢山あると思う(例えば内田吐夢の『浪花の恋の物語』や『恋や恋なすな恋』 )。それに、木下は(楠田浩之は、か?)開かれた戸外の空間を背景にしたシーンの方が力量を発揮すると思う。

 ただそうは云っても木下の実験精神には最大限の敬意を表します。また、田中絹代のファイトもいつもながらですが胸を打ちます。『笛吹川』といいこれといい木下の失敗作には憎めなさがあるのが救いです。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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