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[コメント] 張込み(1957/日)

原作は清張の代表作の1つで、傑作短編だ。橋本は原作をもっと膨らませ、‘橋本の張込み’にした。
KEI

**ネタバレ注意**
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清張は原作の創作動機を「新聞に、銀座の殺人事件で犯人が奥さんの実家のある九州へ逃げ、刑事が張込みに行った、という記事があった。刑事も大変だろうが、張り込まれる先方の家族も大変だろうと思った。」(黒い手帖他要約)と語っている。

物語は一言で言ってしまうと、その張り込まれる方の1人の女の隠された(というか、心奥に埋めてしまった)顔を描いている。

橋本はそれなら更に、刑事の方の(隠された)私生活の顔をも描いてみようと思ったのだ。 原作では刑事は1人だ。まずそれを2人にした。若い刑事と老練な刑事だ。若い刑事には老練な刑事の奥さんからの見合いの話が進行中だ。しかし彼には、付き合っている娘がいる、とした。

映画はその娘の貧しい家庭、老練刑事の家庭、私生活をも描いている。

それだけの設定準備をして、橋本が目指したのは‘希望’だ。原作は何ともシリアスだが、希望はない。

橋本は「やり直そうと思った時から、新しい人生は始まる」という若い刑事のセリフを、幕切れに強引にねじ込んだ。犯人と若い刑事自身に向けて。

さすがの橋本も、本当の主人公の彼女には、時代の社会通用観念(女はどんな状況であれ、結婚が1番)に従って、上の希望の言葉はかけられなかった。その点が、全体のバランスを悪くしている。

(評価:★4)

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