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[コメント] ニュー・シネマ・パラダイス(1988/仏=伊)

「老い」とは
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「老い」に関しての映画だと自分は思った。「老い」について自分と重ね合わせて考えさせられた。

少年時代のトト。何も考えてない。時々母親に叱られることはあっても、基本的にいつも楽しい。やりたいこと、映写室に入れて楽しいね。そういう意味では相思相愛なのだ。「今、好きでいられるもの」があって「好きなものが手に入る」状態だ。純粋で、好奇心たっぷりで、どうやったら楽しくなるかさえ考えていれば良いのだ。確かに自分が小学生だった頃は先のことなんか何も考えず、毎日友達と遊んでいただけだったな。

青年時代のトト。今度は女の子のことしか考えてない。映写機も好きだけど、エレナの方が圧倒的に大きい。エレナに愛されたい。エレナがいなかったら生きていけない!だから毎日ストーカーみたいにエレナの家の前で待ち続ける。このひたむきさ、目的に関する純粋さは、少年時代のものと同じだ。ただ、悲しいかな、どれだけ切望しても望めば手に入るとは限らないのが現実だ。実際、行き違いでエレナとは離ればなれになってしまう。相思相愛ではなく、「今、好きでいられるもの」に対して一方通行だ。確かにね。そんな時が自分にもあったな。

そして壮年時代のトト。「今、好きでいられるもの」はない。エレナに対する未練だったり、映画館に対する郷愁だったり。頭にあるのは「過去」のことばかりなのだ。成功していようが、満たされない。純粋でもないし、好奇心も枯れ果てているだろう。

壮年時代のトトを見ているのは辛かった。何故なら、自分には「老い」に対する恐れと悲しさを、徐々に感じ初めているからだ。自分は青年と壮年の狭間にいて、まだ人生で迷っていて、健康だとか性機能を損なわないかが気になり始めているのだ。親族の死因をみて未来の自分の予測をしてしまう。幸い、自分にはまだ好奇心はある。「今、好きでいられるもの」はある。体の自由がきくからだ。でも、特に男は加齢によって好奇心がなくなっていく傾向があると思う。何にも興味を持たない老人を見て、そうはなりたくないと思っている。

壮年時代のトトを見て、そうはなりたくないと思った。老いたら、「今、好きでいられるもの」はなくなるのか?過去の郷愁に浸るしかないのか?過去しかないのか?希望を感じない。漫画「黄昏流星群」の方が夢物語であっても希望があって好きだ。自分は「今、好きでいられるもの」を持ち続けたい。

(評価:★3)

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