[コメント] 黒い画集 あるサラリーマンの証言(1960/日)
快調なテンポで見せる映画だが、驚くような画面は、ほゞない。ラスト近くの西村晃による尋問シーンは、多分、屋内望遠カメラのマルチ撮影で、ちょっと黒澤っぽい。しかし黒澤のような明らかな画面圧縮効果は避けたのだろう、控えめな画面造型なのだ。
小林桂樹が、丸の内あたりの社屋を出た後、有楽町の行きつけのパチンコ屋、銀座のビヤホールと、時間つぶしでハシゴする様子を前半と後半で2回、全く同じ構図のカットで反復したり、小林と原知佐子の二人が、真実を証言した後の、自分たちに起こるであろう顛末の想像シーンを繋ぐ場面だとか、ずいぶんと編集で面白く見せている、と云えると思う。江原達怡と小池朝雄の、格闘の決着の見せ方なんかもそうだ。
上でも書いた西村による尋問シーンで、小林が新橋の映画館で見た『夜ごとの美女』の場面を語る部分、こゝの演出が矢張りクライマックスだろう。映画の主人公(ジェラール・フィリップ)の、はかない夢が、小林の状況と重なっていくのは、なかなか良く考えられた演出だ。
#小林が、前半、渋谷で見たと云う映画は、『西部の嵐』と『パンと恋と夢』。後半に新橋で見たのは、『夜ごとの美女』と『お嬢さん、お手やわらかに!』。
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