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[コメント] 陽のあたる坂道(1958/日)

家族の崩壊から新しい家族の再生へ。暗くなりそうな話だが、男女4人の爽やかな演技とやわらかな映像が、胸をすっとさせてくれる。自分にとっては、色々な意味で、忘れられない作品となった。
Pino☆

 以前、齢60を超えた親父に好きな映画を聞いたところ、かなり悩んだ挙句、返ってきた回答が、『東京物語』と本作だった(ちなみに、黒澤作品は暗いから嫌いだと言っていた)。

 『東京物語』は良い映画だとは思ったが、自分には、世界の名作と言われる所以が今一つよく分からなかった。理解し難い表現があるし、やや残酷な雰囲気を残すラストは後味が悪く、何となく好きになれなかったのである。

 それに比べると、本作は分かり易かったし、大きな希望を与えてくれるラストは、非常に爽やかな感動を残してくれた。『東京物語』を観たときは、思わなかったことだが、本作を観終えたときには、良い作品を紹介してもらったと親父に感謝の気持ちを抱いたのも事実である。

 また、石原裕次郎という人の凄さを、改めて知る良い機会にもなった。彼の演技は、どこまでもストレートで、外連味が全く無い。だからこそ、人を惹き込む独特の魅力を持っているのだと思う。

 そんなわけで、私は非常に本作を非常に気に入ってしまった。

 さて、『東京物語』と本作、2つの作品には共通したテーマがある。それは「家族の崩壊」である。家の親父は、これらの映画について、何のコメントもしなかったが、ひょっとすると子供達が家を離れ、母と二人でひっそりと暮らす自分の少し寂しい気持ちを、これらの映画に込めたのかもしれない。

 そう考えると、殆ど何もしていない自分の親不孝ぶりが本当に恥ずかしくなった。今、私は、旨い酒でも持って、久しぶりに実家に帰ろうかと思っている。

(評価:★5)

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