[コメント] 好奇心(1971/仏)
ジャズの映画としては『死刑台のエレベーター』より好きだ。劇中で流れるジャズは、映画音楽としての立ち位置と、ローラン少年にとって、女の肉体と同じく欲望と憧れの対象である立ち位置との間を往き来する。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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艶めかしくのたうつようなジャズの響きはまた、ローランの鬱積した想い、やり場のない怒りの暗喩でもあるだろう。それでいて、どこか彼の苦境を茶化しているように聞こえる面もある。
こうしたジャズの多義的なニュアンスは、映画のラストで極まる。母に童貞を捧げたローラン。その罪責ともマザーコンプレックス的な恥ずかしさとも分からぬ何かを洗い流すかのように、その夜の内によその少女と寝る。部屋へ帰れば、父と兄達。ローランと母は、父と兄達に知られてはならない秘密を抱えているが、ローランはまた、他の女と寝たという、母の知らない事実をも抱えている。一段飛び、二段跳びのようにして急に大人の階段を上ったローラン。それまでは大人の世界そのものに見えた父と兄達が、急に、あまりにも牧歌的な、無邪気な笑顔を向けているように見えてくる。もう笑うしかないこの真実。
ローランを慕って付いてくる少年との、同性愛的な雰囲気も見逃せない(笑)。ゲーテの「魔王」の朗読劇では、裸で一緒に毛布に入っていたりする。兄達ともふざけて性器を見せ合っている。同世代の少年が母をナンパしていたり、と、全篇に漂う妙に変質的で艶笑談風な雰囲気がなかなか珍味な映画。
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