[コメント] どん底(1936/仏)
『人情紙風船』がほぼ同時に作られている。ギャバンはワルで抜け目なく、しかしロマンチックでもある奴で、ジョン・レノンが『ワーキングクラス・ヒーロー』を唄う何十年も前に既にそれをやっている。結末で二人のゆく道は『大いなる幻影』に真っすぐ続く。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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若いふたりがどん底からぬけ出して希望をもって歩いてゆく。とてもいい結末だ。道ばたで食べる食事。過去はない。そんな男女はこの時代、ヨーロッパにも日本にもたくさんいたはずだ。かれらの向かう先は、パリであったり、アメリカであったり、満洲であったりしたのだが、いずれにしてもそれからの苦労は生やさしいものではなかっただろう。――そして二度にわたる世界大戦。『大いなる幻影』の時代だ。
大いなる破壊があり、破壊の後に生れてきた世代から、ジョン・レノンたちがあらわれて、『ワーキングクラス・ヒーローになるってのはちょっとしたモンだろ(皮肉)♪』と唄う。ちゃんと歴史は繋がっているのだ。
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ただ、わたしとしては、おなじゴーリキーの『どん底』を下敷きにした映画なら、『人情紙風船』のほうがいいと思っている(黒澤のは観ていない)。『人情紙風船』は行きどまりの映画で、歴史がない。希望もないかもしれない。しかし、日本人の情緒がある。日本ではそうなる。ロシア人の書いた原作とも、このフランス版とも違うところへちゃんと着地している。そしてそれは意味のあることだと思うのである。
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