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[コメント] お引越し(1993/日)

相米慎二監督だから許す!
chokobo

「おめでとうございます」この言葉で全てが吹っ切れたようだ。

親二人は他人同士だ。しかし自分は半分ずつ血がつながっている。これは子供が親を意識した時点で自覚することだ。そのきっかけがこの映画では別居というスタイルで自覚を促している。

親は子供を「自分のもの」と思っているから、子供の気持ちになろうとする必要もないし、放置しておいても子供であることには変わりないと思っている。親が別居しようが子供は子供だと思っている。

しかし子供の立場からすれば親が考える以上に深刻である。そのストレスが子供に降りかかる。そして決断する、というわけだ。

過去の思い出に「おめでとうございます」とは、なるほど時間の経過は巻き戻すことができないことを認識させてくれる。よりを戻そうと努力しても、どうにもならない時間の経過、時間の積み重ねが存在するのだ。このシーンは息を止めてしまうほどの緊張感に満ちていた。スゴイ演出だと思う。

相米監督の作品は疲れる。映像から緊張感が飛び出してくるからだ。それを目撃し、我々は息をのむ。その緊張の中に引きずられるからだ。命を削って作るこの迫力を感じることができるだろうか。スゴイことだ。

長回しで徹底的に役者の緊張感を引き出す演出は見事。だがこれが相米監督のホントのイデオロギーがどうかは疑問。テクニックにのみ相米色が映し出されているような、そんな映画でしたね。

(評価:★4)

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