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[コメント] 男はつらいよ(1969/日)

どうせ見るならまずこの1作目から見るべきだ。
G31

 TVシリーズの最終話でハブにかまれて死んだ寅が甦った映画と見ると、冒頭シーンの桜吹雪がより印象的に見えるのではないか。

 [半可知識1]テキ屋・寅次郎が土地土地のお兄さんお姉さんにご挨拶するシーンが出てくるのはこの1作目だけなんだそうだ。

 [半可知識2]寅(渥美清)が独唱する「♪こ〜ろ〜し〜たいほ〜ど〜、惚れてはみ〜た〜が〜、指〜も〜触れず〜に〜、わか〜れ〜た〜ぜ〜」(変な歌だが、いい歌だ)は当時の流行歌とかではなく、この作品のために山田洋次が作ったものだと聞いた。

80/100(07/04/09記)

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(以下21/10/10追記)

 この1作目は本当に名場面のオンパレード。山田洋次監督も、会社の猛反対を押しきって作ったというだけあって、いろいろな要素をギュウギュウ詰め込んでいる。上映時間わずか90分程度とは思えないほど、中身の濃い作品と思います。桜の満開の江戸川土手から白黒映像で始めるという、テレビドラマで一度死んだ寅を生き返らせる映画的な仕掛け。おいちゃんおばちゃんを前に語られる卒なく行き届いた挨拶の口上。涙ぐむおばちゃん。江戸っ子てのは挨拶がきちんとできるってことを何より尊ぶよなウンウンウン、みたいな。「お兄ちゃん?」「そうよ。お兄ちゃんよ!」のさくらとの邂逅シーン。・・・キリがない。

 題経寺の門のくぐり戸で、別れ際、冬子と握手した寅が、冬子に惚れる、というより、恋に落ちていく。その過程が手に取るように描かれます。シリーズの後の作品群では誰彼構わず惚れてしまうというイメージも強く、ここまで寅の惚れる(と言うより「恋に落ちる」と思う訳だが)心的過程が丁寧に描き込まれるのは珍しいと思います。そして、舞い上がった寅が、♪こ〜ろ〜し〜たいほ〜ど〜と歌いながら参道をとらやに帰る道すがら、うるせえよ!とばかりに吠え立てる近所の飼い犬たち(たぶん)。この演出の厳格さが何と言っても好きです。

 あらためて観て思うのは、馴染んだとらやの二階の間取りがその後とはだいぶ違うなとか。森川信のおいちゃんが自然にコミカルで、やっぱ初期寅さんをこの人が支えたがゆえに、映画史的な長期シリーズになり得たんじゃないかとか。芝居で笑わされるポイントが渥美清以外にもう一つあったてのが重要だったように思いました。

(評価:★5)

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