[コメント] 男はつらいよ 寅次郎恋やつれ(1974/日)
惚れた女が、他の男と一緒になる。これは、ものすごくつらい、苦しい。そして、そのひとがその男と一緒になって幸せそうな姿を見るともっとつらく苦しい。
でも、幸せそうな姿を見るつらさ、苦しさというのは、それまでのつらさ、苦しさとはどこか違う。なんて言うか、こう、どこか安心できるというか、ほっとするようなものが底にあるつらさ、苦しさだ。もちろん、ほっとするといってもつらく苦しいことにはかわりがなく、それは「こんな時間に旅立ちたくなる」ようなつらさ、苦しさなんだが。
後は思いついたことをそのままに。
まずなんと言っても吉永小百合のGパン姿のスタイルの良さ、美しさにびっくり。ミニスカートが流行っていた時代にあえてGパン姿で彼女のスタイルの良さを際立たせた山田洋次監督の慧眼には恐れ入る。
同時にこれをみながら、コメンテータのゑぎさんが、『男はつらいよ』シリーズを語るごとに、山田洋次は足フェチだと繰り返されており、それを読むにつけ、「えー、そうかなあ?」と思っていたが、ここで敢えて吉永小百合のGパン姿を持ってきた山田洋次の演出を見ると、「足フェチだ」との指摘が「あ、なんとなくわかる」とも思えるし「いや、足だけでなく尻も含めた下半身フェチではないか」とも思ったりしてしまった。
もっとも花火のシーンで吉永小百合が庭に出る際に、浴衣姿にもかかわらずつっかけを引っかける足元のアップのシーンですませたところを見ると、筋金入りの足フェチかもしれない。
そういうことを含めて、山田洋次は案外、男の夢を描くことに長けた監督ではないだろうか。
山田洋次監督は鉄道の使い方がずば抜けてうまい。津和野のバス停での寅さんと吉永小百合の別れのシーン、倍賞千恵子と宮口精二の見送りのシーン、いずれもその背景にはしっかりと鉄路が写り、しかもその時に非常に効果的に列車がシーンに進入してきて走り去っていく。このこだわりようには脱帽する。この動く列車がなかったら、このシーンは実に平凡なシーンになっていたんじゃないだろうか。
ついでに言えば、とらやの2階での倍賞千恵子と吉永小百合のシーンは、非常に静かな緊張感が漂っていて、なんだか二大女優の決闘のような雰囲気があった。
宮口精二はすごい絵になる俳優だなあとつくづく思った。別にどうということのないシーンであっても、かれが着流しで現われるとその一挙手一投足すべてが、文字通り映画のワンシーンになる。これだけスクリーンで画になる俳優というのはすごいことだと思う。
おまけでは、釣り船のシーンでは、なんとなく、このはるか後のシリーズである『釣りバカ日誌』の舞台裏を垣間見せているようで、思わず笑ってしまった。
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