コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 男はつらいよ 寅次郎頑張れ!(1977/日)

中村雅俊の25歳版寅さん
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







中村雅俊が主演であり寅は脇に回っている、と見た方がこの際すっきりする。本作以降はこのパターンの目白押しであり、ここからまだシリーズの半数以上があるのだからもうこれは歴史、寅が薄いと毎度書いても仕方がない。

本作はたいへん優れた喜劇。中村の造形はテレビの延長線上だが寅屋のなかにとても巧く入り込んでいる。初デートの初々しさや失望を演じてやっぱり巧い。寅の20代版であり、最後に突然聡明さを見せて藤村志保を諭す処まで似ている(方向は逆だが)。大竹しのぶが巧いのは当たり前だが、それでもいい。

中村を猿に比較するのも、寅のデートの教示とその実際(特にお化け映画)も、パターンだが面白いし、中村のガス自殺未遂はシリーズ破格の美術で物凄い(爆発までの焦らし方がまた巧い)。寅屋の面々も喜劇に参入しているのもポイント高い。夢オチの成金振りとか、平戸への電話のギャグとか。その他、全編細かなギャグで繋ぐのが素晴らしく、満男に遊ばれる佐藤蛾次郎の猿真似とか、中村はやとの変な神父とか、数えきれない。端役に神経が行き届いているのもいい。食堂で倒れたテーブルを起こすお客とか、疲弊した寅を店まで運ぶ学生たちとか、こういう細部が人情喜劇に厚みを与えている。

最後は「寅さんは心のきれいな人よ」と断ずる藤村の人となりはどうなんだろう、という処が心に残ることになるが、まあ不思議ちゃんであり、茫洋とした彼女の風貌にも、軽快な喜劇である本作の指向性とも相性が良い。そんな人もいるよね。タイトルは「冬の旅」のほうが相応しかった。ベストショットは上記のガス爆発を除けば、欄杭並ぶ鉄道沿いを立ち去る寅。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。