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[コメント] 美しき諍い女(1991/仏)

諍いという醜い部分を見えないように露呈しているところが美しい。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







結局この中に出てくる絵画(作品)は映画の画面に出てきません。そこが信用できる部分だと思うんだな。緊迫した映像に魅力を感じます。

別次元の話しになりますが、最近フォーン・ブースを見ました。これは見せない映画です。心理に迫る電話の声。この声に呼応するように登場人物の心理が揺れ動く。この展開が見事だった。しかしながら、その声の主が画面に出てきてしまうんですね。これが寂しい。これは見せるべきではないのではないか。そう思うわけですね。見せない。このあたりの表現が巧みなのは『デビッド・リンチ』でしょう。彼は見せるだけ見せて肝心なところは絶対に見せない。むしろはぐらかす。望遠レンズから次第に寄るでしょ。カメラが。これ見せると思わせぶりなのですが実は見せていない。肝心な箇所は絶対見せない。このセンス。『キューブリック』なんかは最初から見せません。でも『リンチ』は見せそうで見せない。この駆け引きですかね。これが美しいのでしょうね。

さて本作ですがこれはまた『リンチ』とはタッチが異なるけど見せません。この絵画を絶対に見せない。見せるような流れを作りながら観客も見たい見たいと思っていて、見せるよ見せるよ、という筋書きなのに見せない。これがこの映画の唯一信頼できる箇所なんですね。凄いと思います。見せないことの苦悩はこの製作過程に漂っているように思います。素晴らしい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ダリア[*]

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