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[コメント] 海辺のポーリーヌ(1983/仏)

誰かが自分自身について語る言葉。誰かについて他の誰かが語る言葉。どの言葉を信じるべきかの確かな根拠が無いのなら、最も美しい嘘を信じるのは愚かな事だろうか?
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今回の格言――「言葉が多すぎる者は、自らを傷つける者である」(クレチアン・ド・トロワ)

冒頭で、ポーリーヌとマリオンは、扉を開いて、車で中に入っていくが、最後は、車で出てきて、扉を閉める。記憶の内で冒頭の場面が甦って繋がり、まるで一瞬の出来事だったかのような錯覚に陥る。車内でマリオンは、大人の知恵で少女を諭すように、ポーリーヌに「本当の事なんて分からないのだから、自分が信じたい事を信じなさい」と提案する。ポーリーヌは、本当はマリオンこそがアンリに騙されているのを知りながら、それを伏せて、素直にマリオンに同意する。ここでは、表面的には、少女のポーリーヌと大人のマリオン、という形で交わされる会話が、僕らの目には、むしろポーリーヌこそが大人の対応をし、マリオンは、少女のように男の事を信じてしまっているように見える。

だが僕には、それまで魅力を感じなかったマリオンの顔が、初めて愛らしく、美しく思えた。この車内で、少女の成長が確認できると同時に、大人の女も結局は少女とその本質は変わらないのだという事も知る。恋の愚かさも美しさも、遂には変わらないままであるという永遠の真理。それが、扉に入って出てくる一瞬の間のような出来事の中に集約されていたのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ジェリー[*]

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