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[コメント] 時計じかけのオレンジ(1971/英)

感情移入などしてはいけない。この映画は、見る者の内なる倫理観との戦いだ。
ヒエロ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







自らの寄って立つものを持たざる者は、キューブリックの仕掛けた罠に嵌って何かを探そうとするが、そんなものは、ハナからこの映画にはない。「あなたの倫理観は時計仕掛けじゃないですか?」・・・そんな声がスクリーンから溢れていた。

前半の美しいまでに流れるバイオレスシーン。後半の虚無感と敗北感の漂う叙事詩的描写。 そして全編を通して貫かれる甘く激しいベートーヴェンの旋律(ベートーヴェンであることの意味はかなり重要)。 とても計算された、そして、一見すると見る者の倫理観を破壊してしまうような終幕。 見る者自らの倫理観が、借り物であったり、半端なものであればあるほど、この終幕は「結局、いつの世だって、こういう事だよねぇ」的へんちくりん結論に繋がり、嫌悪感のみが残るか、無思考に賞賛することのどちらかにになる。どっちに転んでも、それこそが全体主義の隠れた種子になり得るのだが、キューブリック自身、「善く生きるってどんなんだ?」と自問自答しているように感じられる。

精神倫理(善く生きる≠正しく生きる)探求版の『2001年宇宙の旅』。 (ちなみに僕の中では、『2001年宇宙の旅』は、種の探求版です)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)terracotta[*]

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