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[コメント] 真剣勝負(1971/日)

武蔵と梅軒、芝居と劇画、映画とTVの真剣勝負?・・・相容れぬ二つの軸がせめぎあう不思議な映画。この作品をもって内田吐夢翁と伊藤大輔翁は時代劇映画に幕を引き、萬屋錦之介は7年後の『柳生一族の陰謀』まで刀を置いた。
ぽんしゅう

70年代初め東映にはピークは過ぎたとはいえ仁侠映画、松竹には喜劇映画、日活にはロマンポルノという柱があった。今では想像もできないが、数字の読める企画を持たない東宝が配給・興行面でひとり負けの状況だった。

当時、NHK大河ドラマ『春の坂道』で主役を演じた中村錦之助を起用して、脚本は前年に中村プロで『幕末』を撮った伊藤大輔御大を。監督には60年代後半、錦之介主演で武蔵シリーズを撮った往年の巨匠内田吐夢を迎え、さらには監督お気に入りの三國連太郎まで配するという、なんとかヒットが欲しい東宝にとっては妥当とも苦し紛れともとれる企画。

結果としてはこの映画を最後に錦之介は活躍の場をTVに移し、何作品か時代劇をこなした後、73・74・76年の「子連れ狼」、75年「破れ傘刀舟」、77年「破れ奉行」とテレビ時代劇の一翼をになう。そして、これに目をつけた東映の『柳生一族の陰謀』(深作欣二78年)で銀幕へ復帰することになる。

この「真剣勝負」という作品には、そんな時代背景を反映してか“老映画人と時代劇役者の気概とプライド、そして映画から劇画やTVへとチャンバラの場が移行する時代への戸惑い”が感じられ、よく言えば斬新なねばり、悪く言えばあきらめの悪さが漂っている。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ざいあす[*] 町田[*]

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