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[コメント] 輪舞(1950/仏)

ダニエル・ダリューの美しさが光り輝くばかりだが、他の女優陣も皆素晴らしい。シニョレの退廃もシモンの小間使い姿もジョワイユのコケットもミランダの妖艶もそれぞれに匂い立つような、それでいて洗練さを合わせ持った美しさがある。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 もう何十年も前に見てから、ずっと再見したいと思い続けていたのだが、ようやく思いを果たすことができた。初見の時の記憶では、シーケンスショットを多用している印象からもっと悠々たる映画だと思っていたのだが、今回見てみると、なんとも小気味良いテンポで場面転換する映画で驚いた。狂言回し役のアントン・ウォルブルックも要所要所で登場したぐらいの印象だったが、実際は出ずっぱりと云っていいくらい出番が多い。彼の吐くエピグラムやジョークがとても面白い。しかし、オデット・ジョワイユがレストランに現れるシーンで、若いギャルソンに「重要なのは経験じゃない、観察力さ」という警句を吐いたと記憶していたのだが、今回見た字幕ではそれがなく、仏語を全く解さない私には、本来の科白が判然としない。残念。

 また、ダニエル・ダリューの美しさが光り輝くばかりに記憶しており、他の女優の記憶があまりなかったのだが、女優陣は皆素晴らしい。シモーヌ・シニョレの退廃もシモーヌ・シモンの小間使い姿もオデット・ジョワイユのコケットもイザ・ミランダの妖艶もそれぞれに匂い立つような、それでいて洗練さを合わせ持った美しさがある。

 しかしマックス・オフュルスの演出は自由自在に見せまくる。長回しのクレーン移動も凄いが、目が覚めるような仰角カットが随所にある。セットも例えばシニョレとセルジュ・レジアニが川辺へ降りていく階段や、ジャン・ルイ・バローの部屋の中二階(?)等、仰角カットが生きる造型がされている。天井が映っているカットも数カットあり、「映画の中の天井」好きの私としては、とても嬉しくなってしまった。また、ジェラール・フィリップの扱いは矢張り別格で、ラスト、シニョレの部屋で彼が覚醒した後のシーンは、類例のない「映画の時間」が定着している。まるで、永遠を見た人のような彼の表情に、思わず鳥肌がたち、嘆声を上げてしまった。

(評価:★5)

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