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[コメント] 火まつり(1985/日)

熊野に鎮座する自然を捉えたドキュメンタリー映画。
町田

日本神話は、実にエロい。艶かしい。

元祖特出しストリッパー・天細女(あめのうずめ)は、 自らのXXXを開く熱演で太陽神・天照が引篭もった岩戸をこじ開けた。

こういうエロさは、文明の進化とともに駆逐されていった。 世界三大宗教と呼ばれる新型仏教、キリスト教、イスラム教は、 その何れもが禁欲と道徳を説き、 エロで野蛮な民間信仰を「邪教」として追い落した。

熊野。 大和征伐を目指す神武天皇が上陸を果たした神聖なる土地。 彼の地の変化は、他に比べて穏やかなようである。 いや、違うのかも知れないが、とにかく中上健次は、そういう熊野を、去勢されていない人間の本能が息づく土地を、描き続けた。

この映画には、中上自身が脚本として参加している。そのためか熊野のドキュメンタリー、中上文学総集編としての性格が強い。異常に長い林業、水産業のシーン。生々しい屠殺、調教シーン。これらみな、人間と自然とのセックス=濡れ場なのだから、目をそらせない。寝ちゃ駄目だ。

では人間同士のセックスはどうだろう。肝心のエロは?

って、これがちょっと期待はずれ。一般映画としての去勢されたエロしか感じられず。二人はそこでセックスをしました、ではなく、どういう風にセックスをしましたってのを丹念に描かなきゃ、嘘だ。一方で映像表現の限界に挑戦しながらエロがこれでは少し不甲斐無いと思う。

田村正毅の映像は、全般的に美しく迫力があるのだが、 ちょっと抜けが良すぎちゃって神秘もへったくれもないのが残念。

北大路欣也は大好きな役者であるし、安岡と無邪気に絡むシーンなど大変魅力的であったが、中上の描く男にしては、やや理性的過ぎる気がした。 あんなに理性的だと、最期の行動に意味を求めたくなってしまう。

(評価:★3)

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