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[コメント] グッドフェローズ(1990/米)

歴史面・人物面・演出面。全て言うことなし。スコセッシ作品では最も好きな作品です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 物語は実際に起こったというケネディ空港事件を中心とするが、むしろ内容はマフィアの変遷をたどったものとなり、歴史的な意味合いとしても、内容としても 骨太な内容に仕上げられている。

 そもそもイタリア系移民の互助組織として始まったマフィアだが、組織が肥大化していくに従い、経済活動を中心とする犯罪組織となっていった(このあたりは『ゴッドファーザー』やカポネを扱った諸作品でも観られる)。1970年代になると、未だその互助組織としての体裁はなしていたらしいが、一部の組織が暴走を始めていき、組織としてそれを抑えられなくなっていた時代となる。

 私としてはそう言う歴史の部分に惹かれる部分が強いが、この作品はそれだけではなく、描写においてもすばらしい。物語の本筋は当時史上最大の犯罪を起こしたジミーと、仲間のリーダーでありながらそれを抑えることが出来なかったヘンリーの物語が主軸となる。徐々にこれまでの“良き仲間”が変質していく過程を描き、それはそれで良い感じに仕上がっているが、ここにペシ演じるトミーが加わることによって、一種異様な緊張感を作り出すことが出来た。彼の役付けは、これまでのギャング映画でも度々登場したベイビー・フェイス的役割(明らかにキャグニーを意識してるショットもいくつかあり)。基本的に大きな犯罪には関わらない位置にいるが、個人レベルで周囲に危険な匂いをぷんぷんと振りまき、何がトリガーとなってキレるかまったく分からない怖いキャラに役づけられている。この作品では彼がさほど大物ではないというのが大きく、目に見える狂気部分を一手に引き受けてくれた。一方、彼がいたからこそ、一見まともに見えて、内なる狂気を秘めたデ・ニーロの演技が映える。抑え役のリオッタと仲良くやっている時は、狂気が抑えられていても、そのタガが外れた時、突拍子もないことを平然と行い、それをフォローするために次々と仲間を粛清していく。それらを平然とした顔でやってのけるのがデ・ニーロの巧さ(と言うかスコセッシの信頼と言うべきか)。

 キャラのみならず、比較的長回しを多用したカメラワークも、昔からのギャング映画を思い起こさせる演出にうまくはまってる。特に冒頭の長回しはそれだけで引き込まれる巧さを持ってる。

 撮影中、スコセッシ監督は黒澤監督に招かれて『』に出演。当然その間は撮影は中断となったとか。

(評価:★5)

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