[コメント] 砂漠の花園(1936/米)
ヒロインのマレーネ・ディートリッヒは元修道女で、父を亡くした失意の中、修道女長−ルシル・ワトソンを訪ねるのだが、修道女長は何故か、砂漠に行ってみると良いと示唆するのだ。きっと自分を見つけられるだろうと。というワケで、強引にプロットは砂漠を舞台へと転換する。ただ、この修道女長との会話シーンで既に、とても奇異な感覚を受けるのだが、それはディートリッヒの視線だ。どこを見ているのか分からないカットがあるのだ。本作は全編に亘って、ディートリッヒが、明後日の方を見ているカットが出現する映画なのだ。
北アフリカを旅するディートリッヒは、汽車の中でシャルル・ボワイエに出会う。ちなみに走る汽車の外観は模型が使われている。二人は砂漠の入り口にあたる町に逗留中、恋に落ちる。これが、ティリー・ロッシュ演じるダンサーのセクシー・ダンスを見る場面で、このシーンの濃密さはちょっと凄い。広くない店内に、いっぱい人を詰め込んだ画面。ロッシュのダンスは、客席のボワイエに迫っていく。あるいは、ナイフを持ち、ヘンリー・ブランドン演じるディートリッヒの従者ハジに襲いかかる。この場面では、ボワイエとディートリッヒの視線の交錯を的確に切り返し、ボワイエがディートリッヒに魅かれてしまったことを表現するのだ。
二人は、町の教会の神父−C・オーブリー・スミスの司式の元、結婚式を挙げ、砂漠へ旅行に出発するのだが、これが、凄い風が吹く中、隊列を組での行進で、予想を超える迫力ある見せ方だ。ただし、夜の砂漠の空の造型は、これも予想を超えたチャチい合成で、少々幻滅する。また、ボワイエの過去が明らかになった後の、砂漠の中でのボワイエとの会話シーンも、ディートリッヒが明後日の方を見る演出としては顕著な部分だ。多分、神秘的なムードを醸成するための演出だと思うのだが。
#備忘でその他の配役等を記述します。
・砂漠に住むアラブ人?の伯爵にベイジル・ラスボーン。「アラブ人は、砂漠のことを、アラーの庭園と呼ぶ」と云う科白がある。
・ディートリッヒの従者となるバトゥチはジョセフ・シルドクラウト。バトゥチの従弟がハジで、ヘンリー・ブランドン。ちなみに彼は、『捜索者』などの多くの西部劇でインディアンの酋長を演じている。
・砂占いをおこなう奇妙な男は、ジョン・キャラダイン。ボワイエの過去を知っているフランス軍士官はアラン・マーシャル。
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