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[コメント] ふたりのベロニカ(1991/仏=ポーランド)

豊かな豊かなイメージの連鎖。人物の行動原理、いや、何が起こっているのかさえ分からない場面もあるが、全く面白さ、緊張感を毀損しない。
ゑぎ

 イレーヌ・ジャコブが唄う。雨が降って来て、顔に雨水がかかる。しかし歓喜の表情。濡れたまゝ、男と逢い、キスをし、ベッドシーンになる。この冒頭辺りから、もう画面に見とれ、恍惚となる。

 フィルターを使っているのか、全体に緑がかった画面で統一されている。服や壁紙の選択、観葉植物等も緑系の画面に与している。いずれ、青、白、赤の映画を撮る構想が既にあったためだろうか。また、要所でミタメのカットを挿入する。街角で唐突にミタメの斜め構図になり、向こうから来たオジサンがコートを開ける。あるいは、コンサートシーンでは、不安定なミタメショットが続き、ジャコブは転倒する。他にも、ジャコブの見た目はいくつもあるが、墓穴からの見た目(土が投げ入れられる)もある。画面のバリエーションということでは、接写とフィルターを駆使した歪んだ映像なんかも出て来る。

 また、小道具としてのガラス玉(天地逆さの風景が映る、大きなビー玉)。あと、指にからめる紐。この2つが意味ありげに連携するが、一番印象に残ったのは、人形のバレリーナで、この人形劇のシーンは、劇の表現自体が実に見事だ。息をのむ程だ。こゝも緑が強調されたシーンになっている。そして送られてきたカセットテープの音源(駅のノイズやアナウンス)に導かれる人形師との邂逅と情交の場面も、意味不明さは極まるが、同時に画面の緊張も極点に達するのだ。

(評価:★4)

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