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[コメント] 大菩薩峠・完結編(1959/日)

吐夢らしい重厚な撮影美術が素晴らしいのだが、それに見合った物語は提示できていない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







山形勲とか東千代ノ介とか、どうでもいいような脇役に時間咲き過ぎて肝心の竜之介が霞んでいるだろう。片岡千恵蔵が退屈男風に寝転ぶ姿には迫力があり、枕にした石塔が妻長谷川裕見子の墓石(「悪女大姉!」)、連れられて廃寺の生首の並んだ縦構図、火事を逃れて喜多川千鶴と逃げる延々たる引きのキャメラ、そして渡りかけたら崩壊する橋。どれも吐夢らしい重厚さが素晴らしいのだが、蝶々の幻覚はなぜかとても安物だった。

そして盛られた話は、重厚な撮影美術に見合ったものではなかった。復讐に竜之介を追っていた錦之助の「俺も竜之介と同じ業を背負っている」という気づきはショーペンハウアーのもので、この著名作のネタ元が知れる。それは美しい認識だろう。しかし、この科白に必要とされる重みは錦之助の造形には見当たらなかったし、千恵蔵の最後にも見当たらなかった。流鏑馬の綿密な描写は勉強になる。

(評価:★3)

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