[コメント] 眠狂四郎炎情剣(1965/日)
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人気シリーズとなった「眠狂四郎」は、私なりには第4作である「女妖剣」が頂点の作品だと思うのだが、これで針が振り切れてしまったか、続く5作目の本作も、ある意味もの凄いものに仕上がってる。
三隅研次監督作品は特にアメリカでは高い評価を受けているそうなのだが、その評価の場というのが、いわゆるグラインドハウス。ここでの評価というのが、飛び散る血しぶき、もげる四肢、そして情け容赦のない主人公の性格。という、元も子もない、要するにB級臭さと残酷性の高さが売りの評価。その意味では三隅監督なんかは、日本が誇る本当のB級監督と言ってしまって良いのだが、三隅監督作品の場合、それだけじゃなくてに義理人情という前提を出しつつ、主人公が薄ら笑いを浮かべながらたたき壊す。という凄い造りなので、それが逆に受けたんだろうと思われる。
そして本作は、その三隅作品のそんな部分を全て詰め込んだかのような出来になっている。ここでの狂四郎はほとんど鬼神。関わる全て、特に自分を利用しようとしたり、手向かう人間は、男だろうが女だろうが関係なく一切の躊躇無く叩き斬り、後には本当に何にも残らない。
しかもこれで凄いのは、人を斬り続ける狂四郎のモチベーションというのが、そもそもが暇つぶしから始まったという事実。こいつにとっては、人の生き死にまでが暇つぶしの延長か?と思うと、怖くなると同時に、その格好良さに痺れてしまう。一方では何の抵抗も出来ぬ弱い人間に対しては優しすぎるくらいに優しいし、何の得にもならないのに金まで使ってる。この辺のギャップも狂四郎の魅力だろう。
今回演技的に光るのはぬいを演じた中村玉緒だろう。最初は確かに利用するだけのつもりで狂四郎に近づいたのに、やがて自分自身も抑えられぬほど狂四郎に惚れ込んでしまう。し一度自分を裏切った人間に対し、一切の妥協無く斬る狂四郎の前に「お慕い申し上げます」とまで言わせた。悪女は悪女なんだが、斬った爽快感が一切無しなので、後味がとにかく悪い。
…後味というか、これは三隅監督作品の特徴として、物語性が極端に低いというのが本作の欠点ではある。話があっち行ったりこっち行ったりで、駆け回って、そこにいる人間を斬りまくってる内に話が終わってしまう。本作に物語性を求めちゃいけないんだけど、ちょっとぶれすぎてるのが難点だ。
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