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[コメント] 眠狂四郎人肌蜘蛛(1968/日)

これはシリーズ中でも異彩を放つ変態映画だ。『吹けば飛ぶよな男だが』と同年の緑魔子が紫姫という色情狂、サディスティックな変態姫を演じ映画を支える。
ゑぎ

 しかし全体にプロット展開は上等でセリフも明快。だからキャラクタが活きる。例えば狂四郎のスタンスもよくわかる。或いは家臣の五味龍太郎や乳母の岸輝子、幕府の目付・渡辺文雄といった脇役までよく描きこまれている。 ただし、画面造型はいつものスタイリッシュさがない。風景はオープンセットで西部劇的。なので大映のスタジオセット、スタジオワークの豪華さが出ない。これはわざとそういう選択なのだろう。ズーミングの多用も含めてイタリア製西部劇の影響か。

 その他の役者に目をやると、緑魔子の兄の川津祐介は弓で人間を射て喜ぶ。この登場シーンは『シンドラーのリスト』のレイフ・ファインズを思い出させた。また『肉弾』と同年の寺田農が「黒ミサの子」として登場し、彼を守るために狂四郎が行動するというプロットの肝となる。他の女優陣では、二人の魔子という興趣でキャスティングされたのであろう門付けの女・三條魔子がなかなかいい。あとは三木本賀代がらい病を装った刺客として印象に残るぐらい。長谷川待子久保菜穂子の登場する回と比べると女優は見劣りするが、その分、緑魔子が一人で映画を背負って立つ。考えてみると、緑魔子といい寺田農といいATGを想起させる配役で、これも本作のシリーズ中における突出感に繋がっている。

 画面は私の好みではないが、一部に偏愛者がいるであろうことを容易に想像できる映画ではある。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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