[コメント] アポロンの地獄(1967/伊)
即物性を極めた描写と異形な面々、無国籍な音楽でトリップさせられる。この作風は新藤兼人等を想起させられ、同時代性を感じさせる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
なぜ古代人は神託に従うのか、現代と往還する神託とは何なのか、予言により存在が否定される者とは何なのか、彼は稀な存在なのか普遍的なのか、王権に付く者とは何なのか、舛添とは何だったのか、いろいろ考えさせられる作品。
収束のフランコ・チッティの放浪を、翌年の『テオレマ』での、素っ裸のマッシモ・ジロッティと対比したらどうだろう。マッシモの彷徨する砂礫ばかりの小山は、フランコが赤ん坊のとき捨てられた場所にそっくりだから。しかし、マッシモの最期が焦燥そのものだったのに対して、フランコの最期は神話的に自足しており、そんな幸福もあるのだろうかという感想が残る。パゾリーニが描きたかったのはやはり『テオレマ』の世界だろう。本作はその前哨戦、『テオレマ』のネガを示した作品、という気がする。
本作、赤ん坊を憾みをもって睨みつける父親が異様、もっとも印象に残る。あの神託は彼の無意識が準備したのだ、という解釈が本作にはあるのではないか。後半の議論に繰り返しが多く、有名な話を扱うにしては丁寧過ぎてまどろっこしい処があるのが残念。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。