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[コメント] アポロンの地獄(1967/伊)

パゾリーニは大和屋竺だ!
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本当は大和屋竺は日本のパゾリーニだ!ってのが正しいんだろうけど。

いや、大和屋作品ほとんど観てないんだけどさ。おまけにパゾリーニ初体験だったし。断言する資格全然ないんだけどさ。

倒錯したエロチシズムもさることながら(その傾向が強まるのは本作以降らしいが)、「荒野感」(←勝手に命名」)が似てたから。そりゃ『荒野のダッチワイフ』だけだろ!ってツッコミ入れられそうだけど、荒野に散らばる死体(裸体)がパゾリーニの真骨頂だろうし、私のイメージに刷り込まれている大和屋の世界観とマッチしてしまったのだ。

おまけに描く主眼が内面世界であって、状況なんかある種どうでもよかったりしてる所も似ている。例えばサスペンスを盛り上げようとか観客の共感を呼ぼうとか、(もちろん様式美といったテクニックはあるのだが)そういった職人的巧さより作家性の方が前面に出ちゃってる辺りも似てたりする。それと「当時は」斬新だった!(今だとどことなくチープに感じる)辺りも。

[以下、オイディプスに関する余談・阿刀田高の受け売り]

先王ライオスは神託所へ行く途中だか帰りだか(つまり公式参拝の途中)で殺されたとなっているが、ちょっとおかしかねえか?

なぜ従者が少なかったのか?オイディプスとの小競り合いの時に「我こそはテーベ王である。道を開けなさい」くらい言ってもよかったのではないか?なぜ身分を明かさなかったのか?「先王は旅の若者に殺されたの。あなたがここに来る少し前だったわ」と王妃イカオステが寝物語にオイディプスに語ったってよかろうに。そうすりゃオイディプスはもっと早く勘づき始めただろうに。なぜ王妃は口をつぐんでいた?これらを総合すると、ライオス王は「公式参拝」ではなくて「隠密行動」だったのではないか?ミステリー作家阿刀田高は推理する。

ひょっとして、妾に逢いに行く途中だったのでは?

唯一の目撃者が口をつぐんだまま行方をくらました訳。ライオス王が身分を明かさなかった訳。そしてその浮気に薄々気付いていた王妃が先王の死について一切触れなかった訳。すべて先王の名誉のためではなかったか。浮気説だと辻褄が合う。

でも、前述した通り細かい状況なんかどうでもよくなっちゃってるこの映画だと、そんな事どうでもいいんだけどね。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)muffler&silencer[消音装置][*]

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