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[コメント] 王女メディア(1970/伊)

凄いロケ地の映画。何と云っても、前半のカッパドキアの、岩山と尖った屋根を持つ住居が沢山ある景観に瞠目するのだが、後半のコリントの宮殿という設定の城と、その斜面下から撮った仰角ロングショットも素晴らしい。
ゑぎ

 メディア−マリア・カラスと息子たちが住む家は、この斜面の途中にあり、王とメディア、あるいは、夫イアソンとメディアの会話を、仰角俯瞰で切り返す、坂道での会話シーンも効果的だ。メディアの感情を表象するのに効果的な画面造型なのだ。

 前半のカッパドキアのロケ場面での、生贄なのか、笑っている青年を磔にし、気絶させてから、バラバラに切断するシーンや、メディアが金の山羊の毛皮を弟に命じて盗み、イアソンのところへ持って行った後の、弟に対する仕打ちの場面だとかは、これは原本通りなのかも知れないが、私は、パゾリーニらしいジョークのような演出ではないか、と思いながら見た。

 そして、本作の価値として、マリア・カラスを映画に担ぎ出せた、ということは特筆すべきだろう。しかも、歌唱シーン無し、という、ある意味贅沢極まりないキャスティングなのだ。また、彼女が劇映画に出演しているのは、これ一作きりのようだ。撮影現場に辟易して二度とオファーを受けなかったのだろうか。それとも、本作の成果に満足したからだろうか。

 いずれにしても、主演女優としてのカラスは、押し出しも、演技(というより、表現力)も素晴らしい。彼女の登場カットがいきなりのアップカット、というのもいいし、2カットのカット・ズームイン(ポン寄り)も2回ある。終盤では、彼女のバストショットで停止し(ストップモーション)、二重露光で呪いの場面をフラッシュフォワードする、という、これも特筆すべき演出を見せる。

 あと、邦楽(三味線や雅楽)を取り入れた音楽も神秘的な魅力に貢献している。これが、劇中の登場人物が、シンプルな弦楽器を弾きながら唄う体(てい)の演出がされている場面も多く、こういう部分は奇異というか、緩くも感じる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)袋のうさぎ

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