コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] わが青春のフロレンス(1969/伊)

すっ飛ばしダイジェスト仕様と感動的な主題曲垂れ流しにより、ありふれた労働争議がモテまくりの主人公とともに語られる110分。3時間作品の短縮版ではないのだろうか。充実した撮影美術を千切っては捨てる様はアンゲロプロスの対極を往くもので、カンヌの審査員はよく女優の顔を覚えられたものだと思う。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







1880年にメテロは誕生、父ポルド出獄してすぐ労働運動の暴動に参加するタイプ。妻のアデーレは生活苦で死に、ポルドもアルノ川で砂利採取の労働中に流されて死亡。メテロは田舎町で里親のティナイ家に育てられたが、メテロマッシモ・ラニエリは17のとき不況でベルギー移住する際、別れを告げて両親の住んだフィレンツェに出る。食肉工場でサボタージュ中に仕事に加わって叱られるが、父が無政府主義者と知れて先生ベット・ランプレディに歓待され煉瓦職人。

河川でシーツを洗濯しているいいシーンがある。ここに国王が到着、するとベット先生がひとりで「王を倒せ、宮殿と教会を爆破しろ、無政府主義万歳、コミューンを作ろう」と叫び、捕まるぞとメテロが匿うと「近頃の連中は組合主義になった。俺の望んだのは社会の完全な変革だったのに。俺は絶望した。お前の父のように川に飛び込みたいよ」と嘆く。メテロは父は半分自殺だったのかと彼は知る。メテロはベット先生探して警察に行くと有無を云わさず留置され(国王が帰ればみな保釈されている。予防拘禁はどこでもあったらしい)、そこで無政府主義よりいいよと社会主義者に誘われる。この対立など興味深いのに、何も振り返られない。

ブルジョアの未亡人ヴィオラルチア・ボゼーに農作業手伝って誘惑され、兵役3年間。除隊ということは1900年、ヴィオラは再婚していて子供はあんたの子かも知れないと云う職場復帰するが社長に人員整理を告げられ、古参の労働者がまだ搾取し足りないのか、俺も辞めてやると怒って転落死、転落したのに長科白で無宗教での組合葬を依頼して、赤旗黒旗掲げた葬儀して当局が発砲して介入して大勢が留置。女たちが留置所の外から次々に声かけ、メテロは犠牲者の娘アルシリアオッタビア・ピッコロに呼びかけられて窓際に飛びついて「君と結婚する」と至極簡単な一目ぼれ。面々は騒乱罪と暴動教唆の罪で1年半禁固刑。葬式しているだけなのに、難癖のようなものである。造花づくりのアルシリアと文通して熱烈求愛、「結婚したら覚悟してね」と同衾して子宝に恵まれる。

彼は組合の紹介で働きはじめるがそれは以前の親方の処で、組合もこれでは仕方がないと思わされる。家を普請しているだけで大した企業でもなさそうだ。ベルギーで失敗した里親ティナイ家のオリンドと同居して一緒に働くが、彼には最低賃金が与えられず親方は開き直ってストライキ、「1902年の伝説的争議」とナレーションが挟まれる。「この頃から機械が導入され労働者の危機感が高まった」という興味深いナレも何も振り返られない。職人たちは掛け声かかって現場から退出、しかしオリンドは加わらず喧嘩別れ。組合は募金を基金にして食い繋ぎ、アルシリアは造花づくり。ひと月目に資本側から復帰なら厚遇、戻らねば馘首の最後通告が出される。組合側のデルブオノ議員囲んで支援金はまだかと分裂、逮捕者も出る。最後の対決は軍隊が銃持って介入、暴動に発展して労働者同士殴り合い。活動の資金源はどこか等の観客の疑問に映画は何も答えてくれず、最中に資本家の妥協が知らされるご都合主義。

そんななか、メテロはアクマみたいな顔した隣家の組合嫌いの妻イディナティナ・オーモンの毒蛾にかかり浮気。感づいたアルシリアはイディナをぶん殴り、メテロをシカト。スト勝利報告して今に搾取のない社会が生まれると告げるメテロは妻が浮気を知っていたと悟り謝罪し和解したとき、警察が来て暴動教唆で逮捕。獄中で亭主はもう政治活動はしないと誓い、出獄すると自分の子かも知れないヴィオラの息子が金届けたと知り、どうせまた活動するんでしょと妻が笑ってさくさくと終わる。労働者もパリッとした服装しているものだと感心させられる。フロレンスはフィレンツェの英名由来の呼び方だが、なんでそんな邦題なのだろう。原題は主人公の名前。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。