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[コメント] クローズ・アップ(1990/イラン)

たぶん偶然なのだろうけど、キアロスタミはすごいネタを拾ったものだ。ヤラセ満載なのに、それでもなんと映画的な作品になっていることか。[パルテノン多摩小ホール]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







以下、どこがヤラセなのか列挙します。イメージが崩れるのを心配される方は読まないでください。

(1) ラストでサブジアンと本物のマフマルバフ監督が会うシーンがあるが、マフマルバフが来るということはサブジアン本人には知らされていなかった。しかしサブジアンは事前に気がついてしまい、「マフマルバフ監督〜!」と大騒ぎしたため、キアロスタミは一旦撮影を中断し、3か月後になってから改めて撮り直したということだ。

(2) マフマルバフとサブジアンが一緒にバイクに乗りながら話をしているシーンで、「マイクの調子が悪い」と音声がぶつぶつ途切れるのだが、これは実際はマイクのせいではなく、キアロスタミが意図していない内容の会話の部分を、編集でカットしているだけのことらしい(後で「マイクが云々」というセリフをかぶせて、観客を“騙して”いるわけだ)。

(3) 続いて、2人が詐欺被害者の家に着き、呼び鈴を押すと父親が出てくるシーンがある。本当は、最初に呼び鈴を押して出てきたのは、父親ではなく娘だったということだ。父親に出てきてほしいキアロスタミは娘に下がってもらい、改めて呼び鈴を押した。すると今度は息子が出てきた。息子にも下がってもらい、三度目の正直でようやく父親が出てきたらしい。映画では父親のシーンしか使われていないので、我々はまたもや“騙される”ことになる。

以上、キアロスタミ監督から直接この映画の舞台裏を聞いてきた篠崎誠監督の話でした。彼によれば、蹴飛ばされた空き缶が坂道を延々と転がっていくシーンも「たぶん何回も撮り直しているんじゃないかな」ということです。

ちなみにサブジアンは、その後職を転々として、今はバスの運転手をしているとか。

(評価:★4)

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