[コメント] 頭上の敵機(1949/米)
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「最大限の努力(Maximum Effort)」ということがこの映画の副題だと言っていいだろう。
自分が手塩に掛け、可能性を引き出してやり、一人前の兵士に育てた部下が、なす術もなく目の前で敵に殺される。さらに辛いのは、その屍を乗り越えて、それでも前に進まなければいけないことだ。確かに戦争とは、過酷で残酷な極限状況だ。
だがそういった極限状況においてのみ、人間精神の到達しうる高みというものもある。そしてそこには、混じり気のない崇高さがある。この映画が描いているのは、そういうことだと思う。戦争の肯定というよりは、戦争をも人間の営みの一つと捉えた、人間性の肯定だ。
そこに相当な無理がかかっていることも確かだ。この映画は、そういう描写も漏らしていない。私の中では、ラスト、あのままサベージ准将(グレゴリー・ペック)は永遠の眠りについたのだ、そういう物語になっている。それを示唆するもう一点は、本作品の語り部が、主人公たるサベージではなく、副官のストーバル少佐(ディーン・ジャガー)であることだ(※)。
とはいえ戦闘シーンも迫力満点だ。それもそのはず、ドイツ空軍と米空軍が、実際に第二次大戦中に撮影した空戦(実戦)の映像がふんだんに使われているからだ(と、冒頭の字幕に出ている)。戦闘機好きならそれだけでも垂涎だろうが、終盤のダレる時間帯に、たっぷり時間をとって描いてくれる。アクションに乏しいこの映画の、いわばサービスタイムなのだ。戦闘機好きの少年心を存分に堪能させてくれる。
存分に堪能させてくれる・・・はずなのだが、ここへ来ると、物語の持つ強烈な緊張感から一旦解放され、ついウトウトしてしまう。劇場で観たのなら、きっと違うはずなのだが・・・。
※)この物語全体が、戦後イギリスを再訪したストーバル元少佐の回想(フラッシュバック)、という構成をとっている。
90/100(2010/06/20記)
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