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[コメント] ケルベロス 地獄の番犬(1991/日)

ラスト部分のプロテクト・ギア姿の戦いに目が行きますが、ここで監督が一番描きたかったのは、「過去の日本」らしい。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 退屈な作品である。言葉の端々に押井守風をまとわせつつも、淡々と物語は進む。これは、最後のプロテクト・ギアをまとっての殺陣に金をつぎ込んだため。と言う悪評もある。

 しかしこれはある意味、押井氏の本当に描きたいものが含まれているような気もする。極端なまでにこだわった道端の描写も、かつて日本という国が持っていた、失われた「何か」を求めるための彷徨なのだろう。

 特にこだわった道端で食事するシーンは、押井守監督の立脚点であり、そこがもの悲しく、そして何と美味そうに見えることか。

 その意味で監督自身の彷徨とオーバーラップさせることが出来れば、この作品はかなり楽しいものとなるはず。

<付記>

 主演の藤木義勝は『人狼』の伏役もこなしているが、元々「アクションがOKで、犬のような顔をしている人間」と言う押井監督のリクエストに叶う人物だったらしい。台湾の油飯オンパレードの中、次々と撃沈したスタッフ及びキャストの中で唯一腹をこわさなかったと言う「鉄の胃」を持つ人物でもある。今でもちょくちょく押井氏の家に遊びに行くらしいが、押井氏の飼い犬たちが彼の顔を見ると兎角喜ぶらしい。やっぱ犬なんだね。

 後、後半部分の都々目紅一(千葉繁)との乱闘シーンでは本当に良いパンチが入っていたらしく、相方の千葉氏が、「何でわざわざ空振りしようと出したパンチの前に顔を出すんだ?」と言わせる程の熱演ぶり(熱演の割には冗長に見えたものだが)

 LDに収められている「stray Dog」は台湾の道端の風景をこれでもか、と言う位に映し出している。むしろ押井氏が本当に撮りたかったのはこちらの方だったのかも。

(評価:★3)

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