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[コメント] 愛を乞うひと(1998/日)

幼児虐待・折檻致死事件が頻発するニッポンに再降臨した”親捨て”の女神原田美枝子。そして平山秀幸こそ加藤泰の正統後継者。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







僕は、平山監督に関して殆ど無知だったのだが、加藤泰監督作品『炎のごとく』の助監督の中に彼の名前があることは知っていた。

で、平山作品は今回が初体験だったのだが、またもや一目惚れしてしまった。 だって画面が加藤泰(*)なんだもん。回想シーンが。

銀残しっぽい(エンドクレジットを見る限りデジタルエフェクトらしい)、陽光の使い方、大久保の貧乏長屋他セット美術、えげつないバイオレンス描写。そこに散りばめられたセンスと拘りは、例えば熊井啓なんぞの薄っぺらいそれとは雲泥の差で、’90年代の映画とは俄かには信じられなかったほど。

変貌する同一人物の容姿に戸惑いを感じたり、重要な再会シーンでカタルシスを得られなかったり、ということも確かにあったが、それを補う「映画華」(心に残る名シーン)に溢れた傑作と讃えたい。

それとこれは原作評になってしまうのかも知れないが、『愛を乞うひと』という表題が指し示す範囲を、サスペンス調の語り口によって徐々に拡張してゆくプロットが素晴らしいと思った。また「母を訪ねて」を超え「捨てるために探索」(By指輪物語)に至る結末も俺の嗜好にはピッタリだった。

(*)僕が見て真っ先に思い出したのは、先日フィルムセンターで見た『日本侠花伝』。これは泰監督が東映を離れ東宝で撮った作品で140分を超える長篇女一代記。『愛を乞う人』も同じ東宝配給で約140分。

(評価:★5)

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